“健康の要”といわれる腸。食べ物を消化吸収する働きがあるだけでなく、体のあらゆる臓器と関わっています。
便秘や下痢など、さまざまな“不腸(調)”を抱えていませんか。
そこで今回は、腸が体に与える影響や役割、腸が整う食生活についてご紹介します。
〈不腸改善のポイント〉
① たくさんの種類の食べ物を取ろう
② 発酵性のある糖質が、体に合わない人も
③ 1日1回“ゆらぎ”の時間でリラックス
脳に次ぐ神経細胞の多さ
近年、体にとって腸の健康が大事だとよくいわれます。
それは、消化器官としての働きはもちろんですが、脳をはじめとする体全体とつながっているからです。
腸は、心臓や肝臓、腎臓など、多くの臓器と連携しながら、体内のバランス維持に日夜動いています。
腸の不調は放っておくと、全身に支障を来してしまうのです。
また、腸には約1億個の神経細胞があり、人体では脳に次ぐ多さ。
腸が自ら判断する機能を持つことから「第二の脳」と呼ばれます。
注目は“脳腸相関”という双方向のネットワーク。
腸の調子が悪いと脳へメッセージが届き、あらゆる臓器に伝達され体の不調を起こしたり、逆に悩みやストレスが腸に伝わって腹痛になったりします。
精神状態にも影響
「幸せホルモン」といわれるセロトニン。
幸福感と関わるホルモンで、ノルアドレナリンやドーパミンといった興奮物質の暴走を抑え、いら立ちを起こしにくくしたり、やる気や前向きな気持ちに作用したりします。
セロトニンは、脳の中で2%、血液で8%、そして9割は腸で作られているのです。
実際、うつ病の患者には便秘や下痢が多いというデータもあり、心の健康と腸内環境は密接なつながりがあると考えられます。
腸内環境を整えることが、精神疾患の改善に一役買うのではないかと、期待されています。
最大の免疫臓器!
免疫細胞の約7割は、腸の中に存在しています。
免疫力を保つには、腸の環境を整えることが重要です。
いまだ世界で猛威を振るう新型コロナウイルス。
実は小腸から感染しているケースもあります。
腸の粘膜では通常、粘液がウイルスを通さず感染をブロックしています。
しかし、小腸は大腸と比べて粘液が少ないため、小腸の中は人間の弱点になってしまうことも。
新型コロナウイルスで重症化してしまう人の多くは、腸内の健康状態が良くないということが分かってきています。
感染症対策のためにも、腸内環境を意識したいところです。
これが食品ベスト4
腸の健康を保ち、強い味方になる食品ベスト4を紹介します。
① ヨーグルトや納豆などの発酵食品
② 海藻やゴボウといった水溶性食物繊維
③ バナナやタマネギに含まれるオリゴ糖
④ 青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)・DHA(ドコサヘキサエン酸)
この四大食品を含め、さまざまな種類の食材を取りましょう。
健康な腸の条件は、腸内細菌の種類が多いこと。食品数が増えた分、それをエサにする腸内細菌の栄養素が増え、活発に働くようになります。
例えば、コンビニで昼食を購入するときも、パンやおにぎりだけでなく、ブロッコリーやワカメが入った野菜サラダを付け足すなど、水溶性食物繊維などの品目を増やす工夫が、健康の秘訣です。
落とし穴はFODMAP
食生活を改善したにもかかわらず、おなかの具合が良くならない人もいるかもしれません。
真面目な人ほど、「毎食、ヨーグルトを食べる」など、極端な食事をしがち。ところが、人によっては、整腸食が敵となり、おなかの調子を崩すこともあります。
原因の一つとして考えられるのがFODMAP。
発酵性のある4種類の糖質の総称で、ヨーグルトや納豆もこれを含んでいます。
例えば納豆を食べると調子が悪くなる人はガラクトオリゴ糖が体に合っていない可能性があります。
また、日本人の75%は乳糖不耐症といわれ、ヨーグルトが合わない人も結構いるんです。食べ物との相性は個人差があるので、何を食べたら、便の状態がどうなったか、食事日記をつけてみてもいいかもしれません。
お酒とたばこはNG
健康を害する習慣の代表格――お酒とたばこは、腸にとっても、やっぱりNGです。
お酒を飲み過ぎると、腸の壁に隙間を作ってしまうリーキーガット症候群になる可能性を高めます。
そうなると腸壁の隙間からウイルスや毒素が血管に侵入し、全身に運ばれ、あちこちでトラブルになってしまうのです。
また、たばこも良くありません。たばこを吸うことで血流が悪くなります。
すると、腸の粘液が減少し、腸内のバリアー機能が落ちてしまうのです。
機能性の病気の時代
医学的には腹痛を大きく二つに分類します。
一つは大腸がんやポリープ、炎症といった、検査で異常が認められる「器質的な疾患」。
もう一つは、腹痛や下痢、便秘、おなかの張りなどで悩んでいるにもかかわらず検査をしても異常が見られない「機能性の病気」です。
機能性疾患の治療が、今後の大きな課題で、21世紀は機能性の病気の時代だといわれています。
過敏性腸症候群かも
機能性の病気の代表が、過敏性腸症候群やSIBO(小腸内細菌増殖症)です。
テストや発表会の前におなかが痛くなったり、旅行先で便秘になったりした経験はありませんか。これは過敏性腸症候群という病気かもしれません。
また、大腸と小腸の境にある弁に不具合が生じたり、ストレスや感染症が影響したりして、小腸内の細菌が増えてしまう病気をSIBOといいます。
増え過ぎた腸内細菌によって大量のガスが発生し、おなかが張ってしまうのが特徴です。
腸の環境を整える方法として薬の服用や食事の改善が一般的ですが、腸内の掃除をする時間の確保も大切です。
間食しないことも工夫の一つです。
また、心身のリラックスのため、1日に1回は日光を浴びたり、森林を歩いたりするなど、自然のゆらぎを感じてみてはいかがでしょうか。