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若者はなぜ恋をしないのか

恋をしない若者が増えている。

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国立社会保障・人口問題研究所の調査で、交際相手のいない未婚者(18~34歳)が男性で約70%、女性は約60%と、高い水準にあることが分かった【グラフ参照】。


一方で、いずれは結婚しようと考える未婚者は男性で約86%、女性は約90%に上る。

人口減少時代に入り少子化対策の重要性も増す中、このギャップの背景は何か。

中央大学文学部の山田昌弘教授(家族社会学)に聞いた。

過去にない特異な状況

-今回の調査結果をどう見るか。

山田昌弘・中央大学教授

恋愛と結婚のあり方は、時代とともに変化してきた。

今から約60年前は、お見合い結婚が全盛の時代で、多くの人は恋愛結婚に憧れながらも、現実にそのような機会はなかった。

約30年前のバブル経済期は、結婚せずに恋愛を楽しむ風潮が強かった。

その意味で、恋愛をすっ飛ばして結婚を望む人が多い現在の状況は、特異だと言わざるを得ない。

現に、結婚数が減り、生涯未婚率も上昇している。

人口減少や少子化の進行に影響を与えかねない。

結婚に至らぬ交際は「無駄」背景に男性の経済格差

-若者が恋愛を敬遠する背景は。

山田 一つは、国民の生活が豊かになって結婚生活のハードルも上がったことで、結婚相手の選別が進んでいる点だ。

日本では、結婚後は男性が主に養うとの考え方が今も根強い。

このため、恋愛の結果としての結婚より、経済的に安定した生活を営むことを優先した結婚を望む傾向が特に女性で強い。

しかし、男性間の経済格差は広がっている。

それゆえ、結婚に至らない相手と恋愛しても無駄で面倒と捉える若者が、女性だけでなく男性にも増え、気軽に恋愛しない状況になっている。

安定を求める女性は収入の低い男性との交際を「時間の無駄」と考え、男性側も「交際しても結婚は断られるに違いない」として、経済状況が厳しい人ほど諦めてしまう。

実際、内閣府の調査でも、男性の既婚率(20~30代)は、年収300万円未満が8~9%で最も低いのに対し、年収300万円以上だと約25~40%程度に達し、大きな差が開いている。

恋人がいる割合も、年収に比例して低下している。

恋愛への欲求や憧れも低い

もう一つの背景は、恋愛そのものへの欲求や憧れの低下だ。

若者の親世代には恋愛結婚した人が多いが、10年、20年経過したらデートもしなくなり、冷めた関係に映る。

だから若者は「楽しい時期は一時期で、経済力を優先に結婚すべき」と現実的に考える。

こうした状況は、欧米ではあり得ず、日本独特の特徴だ。

若者の性的欲求の減退も影響している。

日本性教育協会の調査では、性関係に嫌悪感を抱いている人が増えている。

原因の一つとして、性教育でのネガティブ(否定的な)情報が影響しているのではないか。

性教育の重要性は言うまでもないが、避妊の方法など重要な知識が十分に教育されず、妊娠や性病、ストーカーなどのリスク(危険性)を訴えるあまり、交際そのものが危ないとの誤解につながっていないか懸念している。

-SNS(ソーシャルーネットワーキングーサービス)普及の影響は。

山田 恋愛を楽しめない原因になっている。

SNSの発達は、若者にとって事実上の監視社会をつくり出した。

例えば、デートの様子など恋愛の模様がすぐに拡散し、仲間からリア充(現実<リアル>の生活が充実している様子)とやっかまれるケースも少なくない。

こうした周囲の反応に気を遣うあまり、恋愛に9展しにくくなっている。

日本文化の特徴である、周囲に気を遣う人間関係のあり方がSNSを介して恋愛に影響を及ぼしている。

-若者のコミュニケーション能力の低下が恋愛離れに拍車を掛けているとの指摘もあるが。

山田 それは違うのではないか。30~40年前も、コミュニケーション能力の有無にかかわらず多くの人が結婚できており、能力の有無は直接的には関係ない。

正社員が多く、経済的に安定していた当時の社会状況も結婚を後押ししたとはいえ、恋愛に対する意欲の有無が一番大きな問題だ。

―恋愛への意欲を高めるには。

山田 正直、難しい問題だが、経済格差を少しでも解消することが環境を変える上で重要だ。今後も恋愛の形は変わっていくだろうが、若い人には恋愛をもっとしてほしい。人として大きな発見や成長がある素晴らしい体験だ。

日本では、恋愛して相手を見つけることが日本人の価値として優先順位が低い。

各地で婚活支援が動き出しているが、人口減少に悩む地方では切実な問題だ。

一方で、恋愛についてはいまだに恥ずかしいものと考えられ、うわさの対象となる地域もある。

恋愛への温かいまなざしも育みたい。

 

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