頭痛や肩凝り、腰痛などの長期的な不快感は、「食いしばり」が原因かもしれません。
無意識の「食いしばり」は、硬いものを噛むときの力の3倍以上にもなります。
歯や顎には約100キロの負荷がかかり、それが全身に広がる影響を及ぼします。
そこで、こちらでは原因や健康への影響、予防する習慣についてご紹介していきます。
「食いしばり」が全身に与える影響
「食いしばり」とは、歯と歯を強くかみ締めることを指します。睡眠時の歯ぎしりも「食いしばり」の一形態です。多くの人が、日中の仕事中などに気づかずに食いしばっています。まずは、自分がこの癖を持っていないか自己チェックしてみましょう。
正しい状態では、上下の歯はわずかに離れています。上下の歯が接触するのは、食事の時や唾液を飲み込む瞬間のわずかな時間だけで、合計して1日に約20分です。ただ歯と歯が接触しているだけでも、歯や顎に負担をかけてしまいます。
強い力で食いしばると、歯が欠けたりヒビが入ったりし、知覚過敏や歯周病、歯肉炎、虫歯のリスクが高まります。さらに、顎に負荷がかかることで顎関節症の原因にもなります。
咀嚼筋はかむときに使われる筋肉であり、頭や首、肩の筋肉とも連動しています。「食いしばり」によって咀嚼筋が疲労すると、頭や首などの筋肉も緊張します。この状態を解消しようとして、無意識のうちに首を傾けたり片方の肩を上げたりする習慣が生まれます。その結果、背骨に負担がかかり、首や肩の凝り、頭痛、腰痛、めまい、しびれ、倦怠感などの症状が現れるのです。
「食いしばり」など歯や顎の健康を治療することで、全身のさまざまな不調が改善され、健康を取り戻すことができる場合があることを、できるだけ多くの方に知っていただきたいと思います。
「食いしばり」のセルフチェック
自分は「食いしばり」をしているのか、気になりますよね。
次の方法でセルフチェックしてみましょう。
・「イー」と口を開いた時に、上下の歯の真ん中がずれている。
・上側と下側の歯のかみ合わせ部分が削れて平面になっている。
・歯の詰め物が頻繁にとれてしまう。
・歯がしみる
・梅干しのような皺が下アゴにできる
さらに、「食いしばり」が悪くなると、舌の両脇に歯形がつく、アゴの内側にこぶができる、頰の内側のかみ合わせ部分に白い筋が入るなどの症状があります。
姿勢に注意
「食いしばり」の主な原因は「悪い姿勢」です。体の重心が後ろに移動し、かかとに重心がかかると、首の後ろの筋肉が緊張し、下顎が後ろにずれます。その結果、舌の位置が下がり、気道が狭くなり呼吸が浅くなってしまいます。息苦しさを感じると、人は気道を広げ、呼吸をしやすくするために歯を食いしばるのです。
良い姿勢を保つためには、「胸を張る」ことが良いと思われがちですが、それは誤解です。無理に胸を張ると、腰が反り、首や腰に余計な力がかかります。これは首の凝りや腰痛の原因になります。
今回紹介する良い姿勢のポイントは、力を抜いて立つことです。実際、「食いしばり」のある人の多くは、力を抜くことが苦手です。体の力を抜くために、肩に力を入れて上げ、ゆっくりと力を抜きましょう。これを数回繰り返します。
椅子に座る際も、足の親指に意識を向け、足裏全体でしっかりと支えましょう。そうすることで、自然と良い姿勢が保たれます。歩く際は、足の指を使って歩くことにも注意しましょう。最後に、足の親指で蹴り上げるようなイメージで歩くことが大切です。
力が抜けていると、舌は自然と上顎に密着します。正しい舌の位置を確認しましょう。良い姿勢を保つと舌が上がり、呼吸がしやすくなります。
・上の前歯の生え際から5mmくらいうしろに舌の先がある
・舌の全体が上のアゴに張り付いている
姿勢が悪く、常に体に力が入っている人は、マウスピースなどの治療をしても「食いしばり」を改善するのは難しいでしょう。まずは良い姿勢を身につけることが最も重要です。そして、他の予防の習慣も試してみてください。
よい姿勢とは
良い姿勢のポイントをわかりやすくまとめると以下の通りです。
・目線は地面と平行に保つ。
・肩の力を抜いて、やや内側に引っ込める。
・背中のラインは緩やかなS字の形になる(少し丸まった感じ)。
・足の親指に意識を向けて、足裏全体に体重を均等に分散させる。
・舌を上顎に密着させ、呼吸しやすくする。
・発声しやすい姿勢を保つ。
悪い姿勢とは
良くない姿勢のポイントをわかりやすくまとめると以下の通りです。
・目線が上向きに向いている。
・胸を張り、肩が外側に反っている。
・首の後ろや肩甲骨、腰に力が入っている。
・重心がかかとにある。
・足の指が浮いている。
・舌が下がり、呼吸が浅くなっている。
・発声がしにくい。
「食いしばり」の予防方法
食べる時は前歯で
食事の時、無意識に噛んでいると片方の奥歯だけを使って嚙みがちになりますよね。
奥歯のみを使ってしまうと、アゴの周りの筋肉が緊張してしまい、睡眠中に「食いしばり」になってしまう可能性があります。
食事の時は、まず初めに前歯で噛んでから、食べ物を少しずつ後ろの歯に送るようにしながら噛むかむようにしましょう。
前歯で噛むことにより、顔全体の筋肉を動かすことができ、奥歯の「食いしばり」防止になります。
一度に口に入れる量を少なめにすることがコツです。
枕の高さを適切にする
良い寝姿勢になると、次のような変化が起こります。
・舌が上がる
・上下の歯が離れる
・食いしばらなくなる
なので、以下の手順で枕の高さを調整しましょう。
・あおむけになりる。
・枕のふちに肩を当て、首と後頭部をしっかり支える。
・バスタオルを三つ折りにして、枕の下に敷く。
・天井に対して目線が直角になり、呼吸や唾の飲み込みがしやすい高さになるまで追加調整する。
・バスタオルを二つ折りにするなど、微調整を行う。
・横向きで寝る場合は、鼻筋と床の面が平行になるようにする。
爪先立ち
爪先立ちで足指を刺激することは、体のバランスを改善し、正しい姿勢を維持し、食いしばりを予防するのに役立ちます。
以下の手順を朝晩に15回ずつ行ってください。
・壁に軽く手をつき、息を吸いながら爪先立ちをします。
・そのまま3秒間キープし、息を吐きながらかかとを地面にゆっくり下ろします。
・かかとを地面につけず、再び爪先立ちのポーズに戻ります。これを繰り返します。
注意: 安全を確保するため、バランスを崩さないように注意しましょう。必要に応じて、近くに手すりや安定したものを持つことをおすすめします。