ある会社が行った「秋の味覚に思い浮かべる食材」の調査結果の第1位はサンマだったそうです。
漁のシーズンが到来し、店頭にも並び始めるなど、間もなく旬を迎えるサンマ。
食べ方や栄養成分から生態まで、幅広くご紹介します。
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名前の由来
細長い体つきから「狭真魚(さまな)」と呼ばれ、これがサンマに変化した。
細長く少しそっているため、刀のように見えることから。
「秋刀魚」とも書かれる。
「秋」が入っているのは、現在では初夏から出回っているが、古くは秋に取れるものだったから。
当て字で「三馬」と書くことも。
地域によっては「さいら」「さえら」と呼ばれている。
棒受け網漁
サンマ漁は、光に集まる習性を利用した漁法・棒受け網漁が主流。
藪き網と呼ばれる長方形に組まれた棒に付けられた網を使って行われる。
能率がよい上に、魚体を傷つけないため、漁獲量の95%前後が、棒受け網漁で取られている。
最高級は8月に取れる
身が太くて脂がたっぷり乗った最高級のサンマは、8月のお盆前後から9月前半に北海道で取れる。
シンプルに刺し身や塩焼きで味わうのがおすすめだ。
10月以降に北海道から南下してきて千葉の銚子あたりでたくさん取れるものは、泳ぎ切って身は痩せ、脂は抜けてしまうため、フライや酢の物、つみれや炊き込みご飯などに調理して食べるのがいい。
ただし、和歌山地区の特産物であるサンマのすしは、脂肪分が少ないサンマを原料にするからこそおいしくできるといわれている。
値段は、初夏の漁の解禁日には1尾600円~1200円前後にもなるが、10月以降になると100円を大きく割ることも。
また、冷凍技術め進歩により、旬の時期に取って急速冷凍し、品質が低下しにくい業務用冷凍庫で保管したものなどは、脂が乗っていない時期の生よりおいしいことも多い。
見分け方
背中が盛り上がり、頭が小さく見えるものほど脂が乗っている。
また、鮮度はくちばしを見ると分かりやすい。
オレンジ色がはっきりしているものほど新鮮で,古くなると白っぽくなってくる。
しっかりと管理された魚
サンマは、成長の段階によって広い海を長距離移動する回遊魚です。
魚の回遊は、まだまだ未知の世界がたくさんあり、多くの研究者が、どこで卵を産み、どんな旅をしてえさ場にたどり着くのか、研究を続けています。
生まれたばかりのサンマは一年中見つかり、発見される海域も日本の沿岸から太平洋のはるか東の沖まで広がっています。
そのため、取れたサンマがどこで生まれて、どこで育って日本の近くに回遊してくるのかは、実はよく分かっていないんです。
身近な魚であっても生活の全てが分かっているわけではありません。
逆にいえば、私たちはそこにロマンを感じているんです。
主なサンマの漁場は北海道と東北海域で、総漁獲量の80%近くがその地域で取られています。
あまり知られていませんが、サンマは”取り過ぎない”ように「管理」されている魚です。
海の資源というのは、取り過ぎなければ生物学的に持続可能、回復可能であり、このぐらいなら取っても差し支えないというものがあります。
サンマは、水産庁によって毎年、取っていい量が決められています。
しっかり管理されているからこそ、私たちは毎年、おいしいサンマを食べることができるともいえますね。
【さんま】ダツ目サンマ科サンマ属
漁獲可能量(TAC)
漁獲可能量とは、水産庁が特定の魚種ごとに捕獲できる総量を定めたもので、略称はTAC(Total Allowable Catch)。
日本では漁獲可能量を定めて、漁獲量がその数量を上回らないように管理している。
選定基準は、①漁獲量が多くて国民生活上で重要②資源状態が悪く緊急に管理を行うべき③日本周辺で外国人により漁獲されている、のいずれかに該当し、かつ漁獲可能量を設定できるような科学的知見の蓄積があるもの。
現在7魚種設定されており、その中にサンマも入っている。
胃がない?!
サンマは、主に動物プランクトンのカイアシ類やオキアミ類、タンキャク類を食べて成長する。
実は胃がなく、腸も短いため、非常に消化が早い。
排泄物がたまらず内臓が傷みにくいため、”サンマのワタは食べられる”という人も多い。
寿命は2年と短く、その期間に約7㍉から40㌢程度まで成長する。
栄養成分
「大衆的青背魚」の代表ともいえるサッマほ、安いだけでなく栄養も豊富。
タンパク質よりも脂肪の方が多いという珍しい魚であり、DHAやEPAを摂取することができる。
DHAは、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らして高脂血症を改善。また、脳細胞の働きを活発にして認知症を予防する働きもあると期待されている。
EPAは、血液を固まりにくくして脳卒中や心臓病を予防するといわれている。
ビタミン類では、赤血球を作り出して貧血を防ぐビタミンB12、カルシウムの吸収率を高めて骨を丈夫にするビタミンDが豊富。
ミネラルでは鉄、銅、亜鉛などをバランスよく含んでいる。
また、内臓にはビタミンA、カルシウム、マグネシウムなどが豊富に含まれている。
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おすすめの食べ方
煮付け
①内臓を取って、ぶつ切りにする。
②鍋に入れ、水、醤油、酒、砂糖(各適量)とショウガを入れる。
③サンショウもしくは梅干しを加える。
④落としぶたをして煮れば完成。
炊き込みご飯
①といだお米にダシと醤油で味付け。
②炊飯器に焼いたサンマを入れて炊く。
③炊き上がったら頭や大きな骨を取り除き,身をほぐしてご飯と混ぜ合わせる。
④薬味に刻んだネギや青じそを添えるといい
締めサンマ
①サンマを刺し身にして塩を振る。
②少し置いたら水気を切る。
③酢に漬けて寝かせれば完成。
つみれ
①包丁で身をたたく。
②片くり粉を少し入れて混ぜる。
③みじん切りしたネギやすり下ろしたショウガを加えてもおいしい。
落語「目黒の秋刀魚」
落語に「目黒の秋刀魚」という話がある。
昔、将軍が遠乗りの際、目黒の百姓家に立ち寄って食べたサンマの味が忘れられず、城に帰ってサンマを食べたがおいしくなかったため「サンマは目黒に限る」と渋い顔をした。
安価な魚を無造作に食べるとおいしくて、丁寧に調理するとまずくなるという皮肉を込めた滑稽話。
江戸時代の半ばごろから、おいしくて身近な魚として人気が出たサンマだったが、そのおいしさは脂が乗っているからこそ。
それを上品に料理しようとして蒸してから焼いたものだから、脂は抜け、香りもなくなり、さぞまずかったのだろう。
きれいに食べることは命への感謝
サンマはきれいに食べるのが難しい食材の”定番”ですよね。
なのに、平皿で出てくると食べた後の姿が丸見えなので隠せない(笑い)。
「左から右へ食べる」「身は、むやみにつまむのではなくブロックを作るイメージで切り取るようにふわっと持ち上げる」ことを意識するだけでも、サンマに限らず魚の食べ方は変わってくると思います。
他人に迷惑をかけていないから、どんな食べ方をしてもいいじゃないかという考えもあるかもしれません。
しかし、私はきれいに食べることは、例えばサンマならサンマの命に対してありがとうという思いの表れであり、漁業の方へのねぎらいでもあると思うんです。
命をいただくから、丁寧にきれいに食べようという気持ちが何より自分の食べ方をブラッシュアップするのではないでしょうか。
全ての食材には四季があり、おいしい時期があります。
ただ、一年中食べられるものが増えてきたこともあって、季節を感じにくくなっている時代だとも思います。
その中で、サンマは秋を感じさせてくれる希有な存在。
サンマを通じて、食材によって季節を感じるすてきな風習がずっと残っていけばいいなと思っています。
きれいに食べたい
箸でまずえらを外す。
箸は、左の上の身に入れて、ひと固まりずつ取って食べる。
左上から右上に食べていく。
全体にかぼすを搾る。
ひっくり返さずに、背骨の下を箸で一往復滑らせて、身から骨をはがす。
不安な場合は左手で軽く頭を支えてもよい。
骨を取ったら、下の身を左から食べる。
完食。
内臓は食べなければ隅によけておく。
塩焼のワンポイント
魚にとって人の体温はやけどするくらい高いので、あまりべたべた触らないように。
また、焼く前に塩を両面にまんべんなく振り、30分以上冷蔵庫で寝かせると旨みが増す。