新型コロナウイルスによる感染症について、SNSを中心に誤った情報が拡散されているケースも見受けられます。
今、早期に終息させるためにも、正しい知識に基づいた行動が一人一人に求められています。
そこで、これまでに分かっていることなどをまとめてみたいと思います。
感染者の約8割は軽症例
中国疾病対策センター(CDC)の発表によれば、新型コロナウイルスの感染者のうち、約80%は軽症例です。
重症化するのは、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、慢性呼吸器疾患などの基礎疾患がある方、さらには高齢者の方であることが分かっています。
「37・5度以上の熱が4日以上続くとき」などといった受診の目安が示されていますが、発熱の症状が3日までであれば、インフルエンザをはじめとする他の疾患だと考えられます。
ですが、4日以上、続くようであれば、新型コロナウイルス感染症を疑う必要があります。
自身の平熱を知っておくためにも、日頃から、検温するようにしておくとよいでしょう。
重症例では、特に肺炎に注意が必要になります。
新型コロナウイルスによる肺炎は、間質性肺炎といって、気道の炎症は強くありませんので、痰が出ることは少ないようです。
ですが、肺が機能しなくなることで、労作性呼吸困難といって、いつもは上れる階段の途中で息切れするなど、少し動くと息切れがするようになります。
こうした肺の合併症が出る前に、診断・治療ができるようにしなければなりません。
人が密に集まる場所を避け、定期的な換気を心掛ける
厚生労働省の調べでは、感染者の約8割は他人に感染させていないことが分かりました。
一方、一人の感染者から拡大したと考えられる事例がいくつかありますこれが、いわゆるクラスターと呼ばれている小規模な患者集団を形成したのです。
そのほとんどは、換気が不十分で、空気がよどみがちな閉じた環境にあったことが分かっています。
かつて、新型インフルエンザが流行したときも、感染拡大の場所として指摘されたのが個室居酒屋やカラオケ店などの換気が悪く、人が密に集まって過ごすような空間でした。
そうした密閉された空間で、かつ高湿度であると、くしゃみから生じた飛沫の噴霧が空気中に漂い、その飛沫を吸い込んだ人が感染するエーロゾル感染の可能性もあるでしょう。
エーロゾル感染は、接触感染よりも感染しやすいことが分かっています。
ただし、麻疹などのように空気感染はしません。
家族に感染が疑われた場合の家庭での注意でも、部屋を分けるとともに、部屋の換気について触れられています。
また、一度、陰性になった人が再度、陽性になったことが話題となりました。
ですが、例えばインフルエンザでは平均すると7、8日ですが、長い場合は1ヵ月後でもウイルスが検出されることがあります。
通常、粘膜感染のウイルスでは、免疫が半年程度は続くので、3ヵ月程度は感染せず、6ヵ月程度は発症しないといわれています。
従って、短期間で再感染することは考えにくいでしょう。
今回のウイルスは、まだ不明な点もありますが、一般的にPCR法の検査では、陰性と陽性を繰り返しながら、徐々にウイルスが消えていくことを知っておいてください。
治療薬の研究・治験が進んでいる
細菌による肺炎の場合、抗菌薬で細菌が減れば炎症は軽くなり、即効性があります。
しかしながら、ウイルス性の肺炎の場合、ウイルスが増殖することにより、免疫応答による炎症が起こります。
従って、抗ウイルス薬でウイルスが減少しても、炎症が続き、悪化することがあります。
軽症で済むことが多いとされているものの、症状が悪化する前の早期の治療開始が大切になるだろうと考えています。
治療は症状に対する治療、いわゆる対症療法ですが、観察研究の一環としての薬剤の使用も始まっています。これらの薬剤は、いずれも新型コロナウイルスに対する薬ではありません。
その一つが、抗インフルエンザ薬の「ファビピラビル(アビガン)」です。この薬剤は2014年に製造・販売の承認を得ているもので、国が新型インフルエンザの流行に備えて、およそ200万人分を備蓄しています。
アビガンは、RNAウイルスが増殖する際に放出する「ポリメラーゼ」という酵素の力を抑えることができるので、ウイルスの増殖を強力に阻害することができます。
新型コロナウイルスも、RNAの複製によって増殖するので、効果が期待されています。
既に投与を始めている中国で、有効であったとの報告もあります。
一方で、アビガンには、催奇性といって、胎児に奇形を生じるといった影響を及ぼすことがあり、妊婦への投与は禁忌となっています。
そのほか、抗HIV薬の「ロピナビル・リトナビル配合剤(カレトラ)」、かつてエボラ出血熱で臨床試験が行われていた「レムデシビル」が、一部の医療機関で使用が開始されています。
薬剤によってウイルスに対する作用が異なります。
さらには、今後の耐性ウイルスの出現に対する警戒も必要ですので2、3剤を組み合わせた治療を行うことの検討も必要になるでしょう。
手洗いと咳エチケットを励行
いずれの薬剤も、実験室レベルでは効果がみとめられていたとしても、実際の患者さんに効果があるかどうかが分かるのは、これからです。
注意が喚起されている通り、「換気が悪く」「人が密に集まって過ごすような空間」「不特定多数の人が接触するおそれが高い場所」を避けるとともに、「せっけんやアルコール消毒液などによる手洗い」「正しいマスクの着用を含む咳エチケット」の励行が大切です。