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津波は海を再生させた

社会

津波は、人間の命や財産を一瞬にして奪い去る、

人間社会にとっては「自然災害」である。

 

しかし、視点や時間軸を変えてみると

また別な姿が浮かび上がってくる。

長期にわたり自然全体を見てきた漁師の見る目

水中の美しい海だけを見るダイバーと、

漁師の見る目は違うものらしい。

 

例えば、サンゴの天敵とされる

オニヒトデについて、

漁師は次のように語っている。

 

沖縄県の宮古諸島、

池間島の伊良波進さん(昭和6年生まれ)によると、

島のタコは、

サンゴが海底を覆い尽くした場所には少なく、

サンゴが死んだ後の「ガレ場」に多く生息するという。

「サンゴが生きたところはタコもいい魚もいないよ。

ギーラ(シャコ貝)や高瀬貝、夜光貝もいなくなる。

オニヒトデは子どもの頃からたくさんいたサ。

オニヒトデがサンゴを食べるからタコが増える。

サンゴだけ守っても海は良くならないサ」と語った。

 

同様に、石垣島の漁師たちが語った

記録もあるので、紹介しておきたい。

「オニヒトデを取りすぎて、

あんまりサンゴが生えても、

ほんとはダメだもん。

オニヒトデを食べるホラ貝はいなくなるし、

サンゴが生えすぎると、

シャコ貝も太陽光線を遮られて、

生きられなくなる。

(中略)みんな楽園の海、

楽園の海というけれど、

ほんとうの楽園にはオニヒトデも入っているはずだよ。

自然のバランスを壊しているのは、人間さあ」

(兼次信男談、吉村喜彦『オキナワ海人日和』)

 

「オニヒトデはだいたい10年くらいの間隔で

大発生して、

その後、自然にぱっといなくなる。

オニヒトデは海を清掃していると感じるね。

むしろ海を駄目にしたのは人間だと思うよ」

(宮良一美談、西野嘉憲『石垣島海人のしごと』)

 

人間にとって一面的で、

一時的な不都合なものだけを排除しようとすると、

自然のバランスが崩れることを、

これらの漁師たちは語っている。

 

長期にわたって自然の全体を

見てきたのが彼らだからである。

「津波」は海そのものの回復運動

例えば津波は、

人間の命や財産を一瞬にして奪い去る、

海そのものが人間社会に

牙を向けた「自然災害」である。

 

しかし、東日本大震災による黒色の津波は、

人間が海底に蓄積した

1㍍ものヘドロの層を洗い流した。

 

宮城県南三陸町の志津川湾では震災の翌年、

養殖のカキが、

それまでは成熟するまで2年かかったのが、

半年から1年で収穫できるようになり、

その味もすばらしいものに生まれ変わった。

 

海が50年若返ったともいう。

 

「津波」とは、達観すれば、

海そのものの回復運動だったともいえる。

 

震災の後、家や家族の喪失を

悲しんだ漁師は数多くいたが、

海を恨んだ漁師はいなかった。

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