今や人生100年時代となり
健康の上で大事にしたい一つが
歯の健康です。
歯が丈夫で健康なら、
全身の健康もアップ、
食事をより楽しむこともできます。
そこで、今回は歯の健康を維持する上で
の基本となる歯磨きの仕方について、
磨き方や注意点をご紹介します。
歯磨きのポイント
自分の歯を守つていくために
最も大切なセルフケアが、
毎日の歯磨き。
ブラッシング方法は
何通りもありますが、
ここでは、代表的なブラッシング法を
説明します
(年齢別の磨き方の詳細は
日本歯科医師会ホームページ
「あなたにピッタリな歯のみがき方を探してみよう!」
を参照)。
ブラッシング
奥歯の溝は小刻みに振動させる
奥歯をかむ面の溝に
歯ブラシの毛先を当て、
小刻みに振動させて磨きます。
歯垢はなかなか取り切れないもの。
丁寧に動かして、
ブラッシングしましょう。
毛先が広がらない程度の力で直角に
歯の表と裏側に
歯ブラシの毛先を直角に当て、
往復運動を行います。
歯と歯茎の境目、
歯と歯の間にきちんと
当てることがポイント。
毛先が広がらない程度の力で、
1~2本ずつ磨きましょう。
デンタルフロスで巻き付けるようにこする
歯と歯の間にデンタルフロスを使用します。
デンタルフロスは弾力性のある
細い繊維の束のことです。
歯ブラシの毛先が届きにくい
歯と歯の間に付着した歯垢を
かき出すのに効果的です。
歯と歯の間に通すだけでなく、
歯に巻き付けるようにして、
歯の表面を2~3回上下に
こするのがポイント。
歯ブラシだけでは歯垢の60%程度しか
落とすことはできませんが、
デンタルフロスを併用すると、
86%が除去できるとの報告もあります。
なお、歯と歯が接している
コンタクトポイントを通す時は
少しきつい感じがしますが、
勢いよく挿入すると歯茎(歯肉)
を傷つけるので注意してください。
歯周病予防
歯茎との境は45度の角度で
歯の表側の磨き方は、
歯と歯茎(歯肉)の境に
歯ブラシの毛先を45度に
なるように当て、
弱い力で細かく振動させます。
歯周病は歯と歯茎の溝から進みます。
歯ブラシが歯ぐきに届いているか、
鏡で確認することがポイントです。
奥歯の裏の磨き残しに注意!
奥歯の裏側も、歯の表側と同様、
歯と歯茎(歯肉)の境に歯ブラシの
毛先を45度になるように当て、
弱い力で振動させます。
前歯の裏側は、歯ブラシを縦に使用します。
磨き残しをしやすい場所なので
入念に行いましょう。
歯間ブラシは内と外から使う
歯と歯の間の隙間のある部分は、
歯間ブラシを使いましょう。
歯茎(歯肉)を傷つけないように、
ゆっくりと斜めに挿入し、その後、
水平にして歯間に沿わせて
2~3回往復させて清掃します。
奥歯は、内側と外側の
両方向から使うと効果的です。
磨いた後のうがいは何回?
虫歯はいわゆる虫歯菌が
糖を食べて酸を作り、
これが歯の成分であるアパタイトを
溶かすことにより起こります。
虫歯になりかけの時、
フッ素を含む歯磨き剤を使うと、
虫歯の修復(再石灰化)が促進されます。
虫歯予防にはフッ素入りの歯磨き剤が
良いといわれるゆえんです。
ところが歯磨きの後に何回も
うがいをするとフッ素が流れて
薄くなってしまいます。
歯磨き後に汚れを吐き出した後の
仕上げのうがいは、
ごく少量の水で1回だけにして、
しばらく飲食しないことにより
再石灰化効果が高まるといわれています。
歯ブラシは1力月1本を目安に交換
歯ブラシの取り換え時期の
目安はいつでしょうか。
歯ブラシは毛先が開いてしまうと、
歯に正面から当たりにくくなり、
効果的に歯垢を落とすことが
できなくなります。
毛先が開くと、開いていない場合に比べ、
歯垢の除去率は63%に低下してしまう
との報告もあります。
また、毛先が開いていなくても、
長い間使用していることにより
植毛に弾力がなくなり、
汚れの落ち具合が低下します。
そのため、1ヵ月に1本を目安に
交換するといいでしょう。
なお、歯ブラシは使用後、
流した水で汚れをよく落とし、
風通しのいい所で、
ヘッド(植毛部)を上にして
保管しましょう。
お茶を飲めば虫歯にならない!?
歯垢が作る酸の量を抑え、
歯から溶け出したカルシウムや
リンの再石灰化で歯を修復し、
歯の表面を酸に溶けにくくする
など多彩な働きをする
といわれるフッ素。
飲むお茶の中にも比較的多くの
フッ素が含まれていることから
〝お茶を飲んでいれば虫歯にならない〟
ともいわれますが本当でしょうか。
お茶の中には微量のフッ素が
含まれていますが、
通常の歯磨き剤は、
お茶より高いフッ化物濃度を示します。
虫歯予防には過大な期待は
できないようです。
魚や海草などの海産物にも
フッ素が含まれていますが、
同様に過大な期待は禁物です。
歯周病は心臓疾患や糖尿病とも関係
歯磨きの効果は、
虫歯や歯周病を防ぎ、
口内を清潔に保つだけにとどまりません。
歯周病があると、歯茎(歯肉)の
中に歯周病菌が侵入し、
血管に入り込むと、心臓の血管や弁、
内膜に取り付いて心臓疾患の
リスクが増すといわれます。
また、脳卒中の危険も増します。
重度の歯周病がある場合、
インスリンが作用しにくくなる
などして糖尿病が悪化する恐れも。
妊婦の場合、歯茎に炎症があると、
歯周病菌や炎症の産生成分が
血液の中に入って、
早産や低体重児出産の危険性を
高めることも分かってきました。
歯周病の予防や治療は、
全身のさまざまな病気の予防や
治療に役立つことにもなり、
健康な生活を送るために大切です。
歯垢が付きやすい場所
毎日の習慣になっている歯磨き。
習慣化している分、ともすると
〝我流″になってしまいがちですが、
どのような磨き方が虫歯や歯周病の
防止に最も効果的なのでしょうか。
エナメル質や象牙質など歯の
硬い部分を侵す「虫歯」。
歯の周囲の組織の病気である「歯周病」。
これらは歯に付着した歯垢(プラーク)が
原因といわれます。
歯垢が付きやすい場所は「歯と歯の間」
「歯と歯茎の境目」、また、
「奥歯のかみ合わせ」の部分や
「歯並びがでこぼこしている所」などです。
就寝前と毎食後の励行が効果的
口の中の隙間の狭い所に歯垢が付着すると、
そこに住み着いている細菌が、
食べ物のかすを分解。
その中で歯を溶かす作用が生まれます。
歯周病は、歯垢の中の細菌が原因で歯茎に
炎症が起こることで発生します。
歯垢をしっかりと取り除いて
おくことが大切です。
磨く際のポイントの一つは歯ブラシ。
歯ブラシは植毛されている「ヘッド」の
大きさや、ブラシの形状、また、
毛の太さによって効果は異なります。
毛が太い歯ブラシは毛が細い歯ブラシ
に比べて歯垢を取り除く効果が高いですが、
隙間が狭い箇所には到達しません。
また、ゴシゴシと強く磨くと、
歯茎(歯肉)などを傷つける
可能性も大きくなります。
そのため、歯科医とも相談の上、
自身の歯や磨き方のくせに合った
歯ブラシを選ぶことが大切です。
歯磨き剤は歯ブラシとともに働いて、
歯垢などを落とします。
さらに、歯磨き剤に配合された
フッ素などの薬用成分が
歯の表面などにとどまり、
歯の健康を保つのに役立ちます。
唾液中の細菌数は毎回の食事の後と、
就寝中に増加していきます。
そのため、歯磨きを行うタイミングは、
夜寝る前と、毎食後すぐが効果的です。
虫歯や歯周病は、細菌が甘い物などに
含まれる「六炭糖」を分解するなかで
酸を出すことが引き金になります。
唾液は酸性の状態を40分ほどをかけて
中性に戻しますが、唾液の分泌が少ない人や、
食べ物を食べ続けている人、
あるいは生活環境が変わって寝る前の
歯磨きを怠りがちになった場合などは、
口内が酸性のままで、虫歯や歯周病
のリスクを高めてしまうのです。
自分の歯磨きの方法で虫歯や
歯周病を防止できているかどうか、
自分ではなかなか分かりません。
そのため、歯垢が赤く染まることで
磨き残しの箇所が分かる「歯垢検知液」を
使うことも一つの方法です。
全身の健康にも大きく影響している
といわれる歯の健康。
歯を損なうと、多くの病気も誘発します。
かかりつけの歯科医の
口腔健康管理を受けながら、
健康な歯を長持ちさせていきましょう。
健康な歯は認知症予防にも
いつまでもおいしく食べ続けるため、
年齢を重ねても元気な歯を
保ち続けることは大切です。
1989年より厚生省(当時)と
日本歯科医師会は
「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」
という「8020運動」をスタート。
運動開始当初の達成率は7%程度
(平均残存歯数4~5本)でしたが、
2017年6月に厚生労働省が発表した
歯科疾患実態調査(2016年調査)では、
51・2%に上昇しました。
仮に「8020」を達成できなくても、
きちんとかむことができる義歯
(入れ歯)などを入れて口の中の
状態を良好に保てば、
20本あるのと同程度の効果が。
食べ物をしっかりかむことが
できれば全身の栄養状態も良好になり、
よくかむことで脳が活性化され、
認知症のリスクが軽減するという
調査結果も出ています。
いつまでもおいしく食べ続け、
健康寿命を延ばすためにも
定期的にかかりつけの歯科医院に行き、
口の中の健康を保ちましょう。