年間の医療費の一部を税金から控除する医療費控除。
控除を受けるには確定申告が必要ですが、2017年分の確定申告から
医療費控除を受ける場合の手続きが改正されました。
そこで、今回は改正のポイントをご紹介します。
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領収書の提出または提示が不要
確定申告は、個人の1年間の所得に対する所得税を計算した申告書を税務署に提出し、
税金の精算(納付または還付)をする手続きです。
年末調整で税金の精算をしているサラリーマンでも、
①一定額以上の医療費の支払いがあった
②ふるさと納税などの寄付をした
③災害により住宅や家財などに損害を受けた
---などの場合は、確定申告することで還付を受けられることがあります。
今回は、2017年分の申告から、①の医療費控除について
大幅な改正がありましたので解説します。
◇
まず、今回から提出書類が簡略化され、「医療費の領収書」の提出
または提示が不要となりました。
代わりに、「医療費控除の明細書」の提出が必要になります。
ただし、領収書は自宅で5年間保存する必要があります。
経過措置として2019年分までの確定申告にっいては、
従来通り領収書の提出による申告もできます。
また、健康保険組合などから送付される「医療費のお知らせ」を提出すれば、
明細書への記載を省略することも可能です。
セルフメディケーション税制が創設 一定の条件満たせば所得控除の対象に
もう一つの改正点として、<表1>に示したように
「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が創設されました。
<表1> | 従来の医療費控除 | セルフメディケーション税制 |
---|---|---|
適用対象者 | 一定の医療費を支払った居住者 | 一定の取組みを行っている居住者 |
対象範囲 | 自己や自己と生計をーにする配偶者や、その他の親族の医療費 | 自己や自己と生計をーにする配偶者や、その他の親族の特定一般用医薬品等の購入費 |
控除額 | 医療費の合計額-10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)=控除額(上限200万円) | 特定一般用医薬品等の購入費の合計額-1万2000円=控除額(上限8万8000円) |
手続き | 確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付して提出 | 確定申告書に一定の取り組みを明らかにする書類と、「セルフメディケーション税制の明細書」を添付して提出 |
領収書等の提出 | 省略(5年間保存) | 省略(5年間保存) |
セルフメディケーション税制は、健康診断などを受けている人が、
一部の市販薬を購入した際に所得控除を受けられる制度です。
従来の医療費控除と、セルフメディケーション税制は選択適用のため、
同じ人が同じ年分で、両方の控除を受けることはできません。
従来の医療費控除額は、1年間で支払った医療費の合計額から、
保険金などで補てんされる金額を引いた額が10万円
(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)を超えたとき、
その超えた金額(上限200万円)です。
一方、セルフメディケーション税制の控除額は、健康増進や疾病予防などへの
一定の取り組み<表2参照>を行っている人が支払った、
特定一般用医薬品等※の購入費の合計額から、保険金などで補てんされる
金額を引いた額が1万2000円を超えるとき、
その超えた金額(上限8万8000円)です。
【表2】
一定の取り組み | 添付書類 |
---|---|
健康保険組合、市区町村国保などが実施する健康診査(人間ドック、各種健診など) | 領収書または結果通知表 |
市区町村が健康増進事業として行う健康診査 | |
特定健康診査(メタボ検診)、特定保健指導 | |
市区町村が健康増進事業として実施するがん検診 | |
勤務先で実施する定期健康 | 結果通知表 |
予防接種(定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種) | 領収書または予防接種済証 |
なお、一定の取り組みを行っている人は、その取り組みを行ったことを
明らかにする書類の添付が必要となります。
※【特定一般用医薬品等】とは
ドラッグストアなどで購入できるスイッチOTC医薬品のこと。
レシートなどに対象商品であることが記載され、
一部の医薬品には共通の識別マークが掲載されています。
(共通の識別マーク)
控除額の試算例
総所得金額等が300万円の人を例に、従来の医療費控除額と
セルフメディケーション税制の控除額を試算してみましょう。
【例1】歯の治療費5万円、特定一般用医薬品等の購入費が3万円の場合。
①従来の医療費控除額=(5万円+3万円)-10万円=マイナス2万円→O円
②セルフメディケーション税制の控除額=3万円-1万2000円=1万8000円
従来ですと控除が受けられませんでしたが、②を選択することで控除が受けられます。
【例2】歯の治療費10万円、特定一般用医薬品等の購入費が2万円の場合。
①従来の医療費控除額=(10万円+2万円)-10万円=2万円
②セルフメディケーション税制の控除額=2万円-1万2000円=8000円
この場合は、従来の医療費控除を選択した方が有利です。
選択に迷われる場合は、国税庁のホームページでシミュレーションができます。