テレビや雑誌などのメディアに登場し、時事問題を分かりやすく伝える作家の木暮太一さん。
「一般社団法人 教育コミュニケーション協会」の代表理事を務め、各地で講演活動を行い、好評を博している。
今回のスタートラインは、″コミュニケーションのプロ″木暮さんにインタビュー。
自分の思いを、自分の言葉で伝え、人の心を動かす極意を聞いた。
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-コミュニケーションの際、こちらの意図か相手にうまく伝わらず、やきもきした経験がある人は少なくないはずだ。
その原因を木暮さんに尋ねると……。
人間は皆、感覚も価値観も人それぞれで、完全に重なることがありません。
なので、コミュニケーションでは、「互いが接する境界線に、いかに歩み寄っていくか」が大事です。
その歩み寄りの障害になるのが、自分が持っている「こうすべき」という感覚です。
こうするべきなのに、あの人は何でできないのか-この自分の価値観の押し付けが、相手との間に壁を作ってしまう原因です。
相手の意図や考え方に注意を払うことが、円滑なコミュニケーションの第一歩です。
誰でも自分が生み出した言葉で、人の心を動かすことが可能。 その鍵は、「教えたいこと」にある。
おすすめの映画があった場合、友達に「あの映画、よかったよ。昔の淡い恋みたいな感じでさ」と、自分が気に入ったところを伝えますよね。
友達はそれを聞いて、「そんなにいいのか。気になるな。見に行ってみるか」となります。
この”100%本心”の思いには、相手を思うことのほかに、何かを売り込もうとするような他意など全くない。
でも、これが本心でないと、相手に何とかよく感じてもらおうと、一から十まで説明して、うさんくささが出てしまう。
「自分の言葉で人の心を動かす」ためには、感動をありのままに伝えるだけでいいんです。
もし、10のうち1しかいいと思えないんだったら、その1だけを言えばいい。
自分の琴線に触れたことや、感情が揺れ動いた震源地に注目しましょう。
「このシーンの映像は、今まで見たことがなくてすごかった」というように、自分がなぜ感動したのか、その理由を細かく「教えたいこと」の中に盛り込むと、さらに言葉の力を強めることができますよ。
-木暮さんはボランティアで全国の学校を訪れ、子どもたちに作文の授業をしている。
そこには、「多くの子どもたちが『その意見は間違っている』『そんなくだらない感想を言うな』と大人たちから『修正』され、自分の感情をそのまま伝えることができなくなっています」との問題意識がある。
そんな子どもたちが、「『自分の感情』を、『自分の言葉』で相手に伝えられるように」「自信を持って今日を生きられるように」したいと木暮さんは願う。
その思いは、”いつしか、自分の言葉を失い、借り物の言葉を使うようになってしまった大人たち”にも響く。
「何でもいいから、教えたいことを書いて」と伝えると、子どもたちは”どや顔”になるんです(笑い)。
そして、ゲームのことやテレビのことなど、自由に書き出します。
さっきまで、何を書いたらいいのか分からないと言っていたのに。
その中で出てきた子どもたちの言葉って、どれも生き生きしていて心に響きます。
しかし、大人は子どもと同じものを見ても、「ふーん」となってしまう。
自分の心を勝手に「これはダメ」「これが正解」と固めてしまっているから。
素直に、いいものは「いい!」と言いましょう。
それには、心が敏感で柔軟でないといけません。
自分の周りのいろいろなものや出来事に興味をもつ。
そして、その感動を人に伝えることで、感情の起伏が生まれ、心がもっと豊かになります。
私は心の感度を高めるのに写真を撮っています。
いつも混んでいる場所が、休日の朝は誰もいないゴーストタウンみたいだとか、新たな発見があって面白いんです(笑い)。
-街で耳にする女子高校生のやりとり。
一人が「やばくない?」と問い掛けると、もう一人が「やぱい!」と答える。
その後も「やぱい」で続く会話。
木暮さんは、両者に「やぱい」の共通認識があるから成立すると分析する。
しかし、共通認識がない場合、両者の溝を埋めるコミュニケーションスキルが求められる。
ビジネスやプライベートにおいて、コミュニケーションの良しあしが、人間関係を決めると言っても過言ではない。
最後に、木暮さんに若者のコミュニケーションカ向上のためのアドバイスをもらった。
コミュニケーションが苦手な人は、ついつい「自分の話」ばかりをしてしまうんです。
営業トークの「うちの製品は素材が……。技術も……」というように。
相手が知りたいのは、「自分が得る変化」なんです。
「(この商品を使うと)Aだった自分がBに変わりそう」と思えば話に興味を持ってくれます。
「相手の変化」に焦点を当てて訴えると、相手の心をつかむことができます。
伝え方のルールを身に付け、恐れずに勇気をもって、どんどんコミュニケーションカを磨いていってほしいですね。