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健康を脅かす化学物質

健康

レイチェル・カーソンが『沈黙の春』で、DDTなど有機塩素系農薬の乱用による環境破壊を警告してから半世紀が過ぎ、新たな「沈黙の春」が再来している。

 

欧米で問題となっているミツバチの大量死が日本でも起こり、昆虫や野鳥の種類がめっきり減った。

 

人間では不妊が増え、発達障害やアレルギーの急増など子どもの健康障害が危惧されている。

環境ホルモンの曝露が発達期の障害を引き起こす

この半世紀で衛生状態は向上し、食料は豊かになり、環境は整備されてきたのに、なぜこのような問題が起きるのだろうか。

 

私たちを取り巻く環境の中でも、多種類の有害な人工化学物質の曝露が要因として疑われる。

 

この半世紀に合成化学物質の生産は増え続け、多用してから有毒性が判明したものが多数ある。

 

DDTやPCBなど残留性有機汚染物質は、難分解・高毒性のため1970年代にほぼ生産中止となったが、環境中に残留して、現在も私たちを汚染している。

 

日本人は、多種類の有害な化学物質に低用量とはいえ複合曝露している
(環境省http://www.env.go.jp/chmei/dioxin/pamph.html)。

 

環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)は、日本では忘れられがちだが、科学的に立証されてきた。

 

特に子どもは、発達期に低用量でも曝露すると、多様な健康障害を起こし、その影響が子孫に及ぶこともあるなど、重大な研究が蓄積されてきた。

 

米国内分泌学会は2009年、「環境ホルモン曝露は子どもの発達や人間の生殖系に異常を起こし、不妊を増加する」と公式に警告した。

 

WHO(世界保健機関)も12年、環境ホルモンを「世界的脅威」と位置付けた。

 

EUでは環境ホルモンに対し、厳しい規制が実施されている。

 

日本では規制がなく、私たちはプラスチックの原料であるフタル酸エステルやビスフェノール類などの環境ホルモンに日常曝露している。

 

プラスチックは海洋汚染の問題もあり、日本でも早急な規制が必要だ。

世界に逆行する日本 EUでは厳しい規制を実施

有害な化学物質の中でも、農薬は生き物を殺す殺生物剤なので、人体にも悪影響を及ぼす可能性が高い。

 

特に昆虫の脳神経系を標的にした殺虫剤は、子どもの脳発達への有害性を示す報告が多い。

 

有機リン系殺虫剤は低用量の曝露でも子どもの脳発達を障害するという論文が多数発表され、米国小児科学会は12年、「農薬曝露は子どもの脳の発達に悪影響を及ぼす」と公式に提言した。

 

有機リン系は人間への毒性が問題になり、欧米では使用が激減しているが、日本ではいまだに使用量が多い。

 

また、有機リン系の代替として開発されたネオニコチノイド系殺虫剤は、1990年ごろから使用が急増した。

 

その後、世界各地でミツバチ大量死が多発し、膨大な研究が行われた結果、ネオニコチノイドが主原因と科学的に判明した。

 

世界では規制が進み、今年、EUは登録ネオニコチノイド主要5種のうち3種を原則使用禁止、フランスは主要5種全てを禁止した。

 

日本では規制どころか、農薬残留基準が大幅に緩和され、世界の動向に逆行している。

 

ネオニコチノイドは毒物ニコチンの類似物質で、昆虫特異性が高く、人間には安全と宣伝されたが、人間を含む哺乳類の脳や生殖系への悪影響が多数報告されている。

 

2016年、国立環境研究所は、発達期にネオニコチノイドを低用量曝露された雄仔マウスに行動異常が起こることを発表した。

 

この結果をそのまま人間に適用はできないが、自閉症など発達障害は、男子に多く、特定の行動に異常が出るなど、発達障害急増の一部を再現しているのかもしれない。

 

ネオニコチノイドなど浸透性農薬は、植物全体に浸透するので、残留すると洗っても落ちない。

 

国内のネオニコチノイド残留基準は欧米に比べて極めて緩く、種類によっては数倍から数百倍も緩いものがある。

 

12年から13年にかけ行われた調査では、国内の3歳児223人の尿から、有機リン系が100%、ネオニコチノイド系が約80%検出されており、基準値内とはいえ低用量長期曝露影響が懸念される。

 

農薬登録の毒性試験には、発達神経毒性、環境ホルモン作用、複合毒性は入っておらず、子どもへの安全性が確保されているとはいえない。

農薬使用量と有病率

日本は農地単位面積当たりの農薬使用量では、OECD加盟主要国中、近年1、2位の農薬大国だ。

 

各国の自閉症の有病率を国際専門誌から調べ、OECDの農薬使用量と比べると、上位4力国が一致した(図参照)。

この一致は因果関係を示すものではないが、無視できない。

 

最近、発がん性が確認された除草剤グリホサートも残留基準が大幅に緩和され、多量使用されている。

 

農薬には環境ホルモン作用の確認されているものも多く、EUでは既に登録失効の農薬が日本では使用されているものも多い。

将来のため予防原則の適用を

15年、国際産婦人科連合は、「環境ホルモンや農薬など有害な化学物質曝露が生殖や出産異常、子どもの脳や健康に悪影響を及ぼしている」と公式勧告を出した。国連では20年までに有害な化学物質の規制を目標としている。

 

日本でも将来のため、農薬など有害な化学物質は予防原則を適用して、早急に法規制を進めるべきではないか。

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