現在、約4,300万人の患者がいると
推定されている高血圧。
治療を受けている患者さんで男性では約30%、
女性では約40%の方が薬を飲んでいるのに
効かないと感じているそうです。
「血圧の薬を飲んでいるのに、
朝は血圧がかなり高い」
このような症状の方は、一度、主治医に
原発性アルドステロン症ではないかと
お尋ねになるといいと思います。
「原発性アルドステロン症」は高血圧患者の1割にも
「原発性アルドステロン症」は、
副腎腫瘍の一つです。
腎臓の上に位置する副腎は、
「コルチゾール」「アルドステロン」
「カテコールアミン」などといった、
私たちの生命維持に必要な「ホルモン」を
産生し分泌する大切な器官です。
この副腎にできる「副腎腫瘍」は、
その多くが良性です。
その上で、こうした腫瘍が先に述べたホルモンを
過剰に分泌する場合を「機能性腫瘍」、
分泌しない場合を「非機能性腫瘍」と呼んでいます。
かつては、非常にまれだと思われていましたが、
近年は、コンピューター断層撮影(CT)や
磁気共鳴画像装置(MRI)検査などの
画像検査を受ける機会が増え、
見つかることが多くなっています。
たとえ腫瘍があったとしても、非機能性で、
悪性でもなければ、経過観察を行い、
特に治療は必要ありません。
従って、副腎腫瘍が発見された場合、
内分泌の専門家の診断を受け、
その見極めをすることが重要になります。
機能性腫瘍には、
アルドステロンを過剰に分泌する
「原発性アルドステロン症」、
コルチソールを過剰に分泌する
「クッシング症候群」、
カテコールアミンを過剰に産生する
「褐色細胞腫」の三つがあります。
このうち、最も多いのが
原発性アルドステロン症です。
放置すると脳梗塞や慢性腎臓病に
「高血圧」というのは、血圧の値が
収縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方、
あるいは両方が140/90㎜Hg以上になる病気とされ、
日本では約4300万人と、最も数の多い生活習慣病です。
ところが、高血圧だと分かっても実際に治療を
受けているのは900万人程度にとどまっています。
そのまま放置すると、脳梗塞や脳出血、
不整脈や心筋梗塞、あるいは慢性腎臓病と
いった命にかかわる重い
合併症を引き起こしてしまいます。
早めに治療を開始することが必要です。
高血圧の8割は、原因が分からない
「本態性高血圧」と呼ばれるものですが、
2割は、何らかの疾患によって血圧が
高くなっていることがあります。
そのうち、最も頻度が高いのが、
「原発性アルドステロン症」です。
全高血圧症の約1割、利尿剤を含む3剤以上の
薬を飲んでも血圧が下がらない
「治療抵抗性高血圧」の約2割が
「原発性アルドステロン症」ともいわれています。
薬を飲んでいるのに、
なかなか血圧が下がらない場合、
この病気を疑ってみてください。
アルドステロンは、体内にナトリウムを
ため込む性質があります。
従って、原発性アルドステロン症では、
血中のナトリウム濃度が高くならないよう、
血液量(水分量)が増え、結果として
血圧が高くなってしまうのです。
初期には、高血圧だけで特別な症状はありませんが、
やがて夜間にトイレに行く回数が増えたりします。
また、カリウムが過剰に排せつされるので、
血中のカリウム濃度が低下し、
手足に力が入らなくなる
といった症状が現れることがあります。
早朝は、朝に高い副腎皮質刺激ホルモンの影響で
アルドステロンが高く、夜間は
この副腎皮質刺激ホルモンが低下するために
アルドステロンが低下してナトリウムを排せつします。
このため、早朝高血圧と夜開頻尿を起こしやすくなります。
血圧の薬を飲んでいるのに、朝は血圧がかなり高く、
夜は血圧が下がるがトイレに何度も起きてしまう、
このような症状の方は、一度、主治医に
原発性アルドステロン症ではないかと
お尋ねになるといいと思います。
片側性であれば手術も選択肢
診断するための血液検査では、
アルドステロン濃度と
レニン活性を測定し、
「アルドステロン/レニン比」を調べます。
この数値が200以上と高く、
かつアルドステロンの値も
高い場合は精密検査を行います。
診断確定のために行う精銘検査には、
①CCT負荷試験
②ACTH試験
③デキサメサソン抑制試験
④副腎CT検査
などがあります。
病状によって検査の内容は変わりますが、
検査時間はそれぞれ30分から2時間半で、
主に外来で行われます。
なお、場合によっては入院して
検査することもあります。
また、血圧を下げる薬(降圧薬)を
処方されている場合、
薬剤を一部変更することがあります。
こうした各種検査によって診断が確定したら、
片方の副腎の病気(片側性)か
両方の副腎の病気(両側性)かを
調べるカテーテル検査
(副腎静脈サンプリング)を行います。
結果、片側性であれば手術を、
両側性であれば薬物療法が選択されます。
手術は、「腹腔鏡下副腎摘除術」といって、
腹腔鏡を使って患部側の副腎を摘出します。
手術によって、約7割の人が、
それまで薬剤によって下げることが
できなかった血圧を下げることができ、
薬を服用しなくてよいようになります。
ただし、治療期間や腎臓の状態によっては、
術後も降圧薬の服用が必要な場合もあります。
薬物療法では、「スピロノラクトン」
「エプレレノン」といった
抗アルドステロン薬を用いることで
アルドステロンが作用しないようにします。
適切な投薬を続ければ、
血圧のコントロールは可能ですが、
効果が十分でなければ、
カルシウム措抗薬を併用することもあります。
かつては、精密検査の結果が出るまでに、
ある程度の時間がかかっていたのですが、
当病院で開発した方法によ肛、数十分で
判定できるようになりました。
また、アルドステロンとレニンは、
かかりつけ医に相談すれば簡単に
血液検査で調べることができます。
原発性アルドステロン症は、
本態性高血圧の患者さんと比べ、
脳梗塞や脳出血が約4倍、心筋梗塞は6倍、
心房細動や不整脈は約12倍もの確率で
合併するとされています。
そうした重い合併症を招く前に、
早期に診断・治療を開始してください。